この記事では、保護者の方からお寄せいただいたお悩みに、児童養護施設や公立小学校や研究授業の教室でたくさんの子どもたちと接してきた、弊社代表の川島の視点からお答えいたします。
今回のお悩みは「他の子と比べてしまう」こと。
今回のお悩みは「他の子と比べてしまう」こと。
Q.アプリで他の子のすごい作品を見て、自分が作ったものとの差を感じているようです。作品について、何と声をかけてあげればよいでしょうか?
A. 作品の良し悪しを評価する声かけではなく、その子なりに工夫したことをただ言葉にしてあげるだけで十分です。例えば作品なら、「◯色を使ったんだね」といった、上手下手の価値判断のない見たままの様子を言うだけであっても、お子さまにとっては大切な承認になります。ただ保護者の方が言葉にして何か伝えてくれたということが、「自分の作ったものが誰かに受け止めてもらえた」という体験となり、自己肯定感の土台を作ります。
「素敵だな」「好きだな」と思ったこともそのまま伝えて大丈夫です。むしろ、なんとか褒めてあげなきゃ、あるいは悪いところを直してあげないと、といったことにとらわれないことが大切です。
いつでもどこでも通用する「魔法の声かけ」は無い
私たちが主催している研究授業でも、保護者の方から「子どもが周りと自分を比べて落ち込んでいる時、どう声かけをしたらいいですか」と訊かれることは多くありました。そういった時に、私が保護者の方に伝えていたのは、「どんな声かけをするべきか」ということよりも、「教室で見たその子の良いところ、素敵なところ」でした。
「こんな声かけをすればみるみる子どものやる気がみなぎる!」といった魔法の言葉はありません。何度も繰り返し、思うことを伝えてあげることで、お子さまが本来持っている創造性が引き出されます。
ここで言う創造性とは、「自分にとって」新しいものを作り出せることであって、外からの評価を目的とするものではありません。自分なりに面白さを見つけられたら、他の子がどれくらいできているといったことは一旦頭の外に置いてしまいましょう。例えば作文なら書きたいこと、自由研究なら興味のあることを突き詰める方が、誰かにやらされたことよりも、遥かにお子さまにとって意味があります。
大前提として、保護者の方のせいではない
アプリの仕組み上、意図せず他の子どもの作品が目に入ってしまってやる気が削がれる、という状況はあるかと思います。ちょっとしたことで苦手意識を感じて挑戦しなくなる、という状況は、お子さまがこれから身を置くであろう様々な環境のどこでも起こりうることです。
それは、保護者の方のせいでは全くありません。
一番長く我が子を見ているのは保護者だからこそ、色々な状況で「ここで何か言わなきゃ、このタイミングを逃したら、この子のためにならないかも」と思い詰めてしまうこともあるかと思います。第三者から見ると素敵なものを持っている子でも、毎日接している保護者にとってはそれが当たり前…ということもあります。
「その子なりの工夫をいつでも見逃さない」といったことは、とても難しいことで、完璧にできる人はいません。ですが、まずは当たり前のことでも、言葉にしてそのまま伝えてあげることで、子どもの自己肯定感は育まれます。世間から見た良し悪しは一旦考えず、ただ見たままを言葉にしてあげることから始めるのはいかがでしょうか。
- ワンダーファイ株式会社 代表取締役
- 川島 慶
話し手のプロフィール
東京大学大学院修了。 過去に算数オリンピック・世界算数の問題制作者、東京大学非常勤講師を務める。 2017年より三重県数学的思考力育成アドバイザー。 開発した思考力育成アプリ「シンクシンク」は世界150カ国250万ユーザーを持ち、「Google Play Awards」など、国内外で受賞多数。 2020年、STEAM教育領域の通信教育「ワンダーボックス」をリリース。
以上、保護者の方からのお悩みQ&Aでした。またお寄せいただいたお悩みの中からピックアップして記事にしてお届けする予定ですので、ご参考となれば幸いです。