2024.08.25

かたちを試行錯誤して課題解決力を育むエンジニアリング教材「ピクトロボ」紹介

今月号のエンジニアリング教材「ピクトロボ」が登場します。ピクトロボではどんなことをするのか、それぞれのステージの難易度設計とその意義等について、この記事で紹介していきます。



エンジニアリング教材「ピクトロボ」とは

「ピクトロボ」では、状況に合わせた「ロボット」をつくって困りごとを解決していくというストーリーで進んでいきます。今月号では、宝石を箱まで運ぶために適したかたちをドット絵で作成します。

「ピクトロボ」は、「まずやってみて、何が良くて、何がいけなかったかを実践から学習していく」というプロセスを、エンジニアリングの基礎として体験してほしいという思いから開発されました。

例えば、宝石を運ぶには、「『うで』がどんなかたちをしていれば運びやすいか?」「どんなかたちなら、回転した時にも動きやすいか?」「地形に合わせてどれくらいの幅にするか?」といったことを試行錯誤できます。

この年代の子どもたちにとっては、「自分で作ったと思えること」「動かして、試してみた結果が視覚的にわかりやすいこと」が大事であると考え、「自分で描いて、自分で動かして、設計を楽しんでいく」というコンセプトで「ピクトロボ」はつくられています。

それぞれのステージの難易度設計

「ピクトロボ」のTOP画面
「何が良くて、何が悪かったのか」を試行錯誤の中で学習できるように、それぞれのステージの問題を設計しています。

最初の家

「宝石を運ぶ」という目的が直感的にわかる、入門的な問題です。

この問題のみ、ロボット作成画面で左にサンプルが表示され、ブロックを追加できる範囲も制限されています。これには、「うで」のかたちを工夫すると運びやすくなるんだな、ということを意識してもらうという意図があります。

2番目の家

宝石の数が増えて、ロボット作成画面でブロック追加範囲の制限がなくなります。より自由に「こうしたら、どうなるんだろう?」を試せる段階としてそうしています。

何度でもやり直せるので、全部塗りつぶしたときと、ブロック数を工夫したときの違いを比較して楽しむのもおすすめです。

3番目の家

「角で動きやすいようにするにはどんなかたちが良いか」を意識することを求められる問題です。回転したときのかたちがどうなるか、を考えることは図形センスを育むことにもつながります。

「はやさチャレンジ!」と「とくてんチャレンジ!」

3つの家で問題を解決すると、画面下に「ひろば」が追加され、「はやさチャレンジ!」と「とくてんチャレンジ!」に挑戦できるようになります。

画面下に「ひろば」が追加されます
ここではスコアというわかりやすい目標があります。
「はやさチャレンジ」では全部の宝石を集めきった時間に応じてスコアが変わります。宝石の大きさによって運びやすさが違うこと、どんなルートで回収すれば効率的か、といったことを自然と考えるようになります。

「とくてんチャレンジ」では、30秒という制限時間の中で宝石を回収します。宝石の種類ごとに異なった得点が設定されており、どれを優先的に回収すると得かという数量感覚が身につきます。

これら2つのチャレンジでは、ロボットのドット数が増えてより細かくかたちを設計することができます。これまでの経験をいかして、様々なかたちを試してみてください。

「ピクトロボ」で届けたい体験

大人からすれば、それぞれの問題を見れば「求められているのはこのかたちでしょ」と答えがすぐわかってしまうかもしれません。それにお子さまが想定よりも長い時間をかけていると、考えてそのかたちにしてる?どうしてそんなに同じかたちばかり作るの?と言いたくなることもあるかと思います。

ですが、「自分の手でやってみる」「自分のこだわりを一旦通してどうなるか体感する」という体験こそが、この教材でお届けしたいことです。「宝石を箱に入れられたかどうか」自体ではなく、そのために自分なりのやり方を探すことに意義があります。

実際に、私たちが主催している研究授業でも、目の前でやり方をデモンストレーションしてあげても「どうしても自分のやり方でやりたい」と粘り強くがんばっていた子がいました。こだわりのロボットでどうにかクリアするケースもあれば、がんばったけれどクリアできなくて違うロボットに変えたケースもあり、一概に「これが良い」とまとめられないほど、それぞれの体験には良さがあります。

問題作成者が想定した解はありますが、それにとらわれることはもったいないことです。こちらが想定していないものを、子どもたちが自分で自由に試して見つけるプロセスの中で、知的なわくわくが生まれます。「ピクトロボ」を通して、自分で考えて何でも試してみることをぜひ楽しんでみてください。